今、日本は大起業時代に突入したともいわれている。筆者の周りの人間が言っているだけ、という可能性もあるが、まあ聞いてほしい。
ちゃんともらえるかどうかわからない年金に、近い未来かならず高騰するといわれている医療費・物価・教育費、リストラや下流老人の増加など、人々のお金に関する不安は募るばかりだ。
国が頼りにならないからこそ、「自分でどうにかしなければ」と思う人が増えている。ここ数年で起業家が急増しているのもそのためだろう。
もちろん、危機感以外の理由で起業をする人も多い。
「平凡な人生で終わりたくない」
「お金持ちになりたい」
などと、野心的な理由で起業する人もいれば、
「上司がうざい」
「会社勤務が辛すぎる」
などと、現実逃避的な理由で起業する人もいるし、
「社会をより良くする事業を行いたい」
「たくさんお金を稼いで恵まれない人たちを助けたい」
などと、大義のために起業する人もいる。
理由は人それぞれだ。
今、この記事を読んでいる人のほとんどは、起業について興味を持っていると同時に、上のどれかに当てはまるような感情を抱いているのではないだろうか。
そして、その感情をどうにかしたいが具体的な方法がわからず、一歩を踏み出すことができないでいるのではないだろうか。
この記事では、そんな大起業時代の迷える子羊ともいえるみなさんのために、起業するための具体的な方法や手順を紹介したいと思う。
起業とは?
起業とは、文字通り解釈すれば「事業を起こすこと」である。では、事業とはなんだろう。難しく感じる人もいるかもしれないが、その答えはとてもシンプルだ。
事業とは?
誰かの役に立つことをし、その報酬としてお金をもらう行為を継続的に行うこと。
誰かの役に立つ
人は誰でも何かしらのニーズ(要望)を抱えている。たとえば、何かに困っていたり、何かを不便に感じていたり、〇〇が欲しい、〇〇がしたいなどといったことを常に何かしら考えている。
そこであなたが、自分が持っている知識やスキルを元に、そういったニーズを解決してあげられる商品やサービスを提供することができれば、その報酬としてお金を得ることができる。
お金をもらう行為を継続的に行う
事業を行うためには、お金が必要となる。事業を継続していくためには、継続的に利益を上げていく必要がある。
以上を踏まえ、起業とは何かということを説明すると、以下のようになる。
起業とは?
自分の持っている知識やスキルから、自分にできそうな事業を考え、実践していくこと。
起業というと、開業届出や会社設立(法人格の取得)を思い浮かべる人もいるかもしれないが、これらを行うこと自体が起業ではない。これらは事業を拡大していく上で必要な手続きにすぎない。「何か事業をやろう」と思った時点で、すでに事業活動は始まっているのである。
自分の持っているスキルや知識をどうやって起業につなげるか
「事業とは、人々が抱えているニーズを解決してその報酬としてお金を得ることである」と上で書いた。では、どうやってニーズを解決するかということだが、その方法は大きく分けて3つある。
- 実体のある商品を提供する
- 実体のない商品(知識や情報)を提供する
- サービスを提供する
つまり、「どうやって起業すればいいかがわからない」という人は、自分の持っている知識やスキルを元に、上記1〜3のどの方法で事業を行うかを考えれば良いのだ。
1. 料理の知識やスキルを持っている場合
たとえばあなたが料理に詳しく、作るのも得意であれば、以下のような方法で事業を行うことができる。
方法 | 具体例 | 収入の得かた |
実体のある商品 | 飲食店を経営する、お弁当を販売する | 飲食代、弁当代 |
実体のない商品 | 料理教室を開催する、ブログや動画で情報発信を行う | 参加費、広告収入 |
サービス | 家事代行を行う | 労働報酬 |
料理を仕事に、ということを考えると一番に頭に浮かぶのは店舗の運営だが、上記2〜3に当てはめれば、他にもさまざまな方法で事業を行えることに気づくだろう。
料理の仕方やコツ、おすすめのレシピなどをブログや動画で発信すれば広告収入を得られるし、人に料理を教えたり、家事代行をしたりといったことでも、人々のニーズを解決し、お金をもらうことができる。
2. フラワーアレンジメント関連の資格を持っている場合
たとえばあなたが女性で、フラワーアレンジメント関連の資格を持っていたとする。資格を持っているということは、十分な知識やスキルも持ち合わせていることだろう。それを活かせば、以下のような方法で事業を行うことができる。
方法 | 具体例 | 収入の得かた |
実体のある商品 | 花屋を経営する、フラワーギフトを販売する | 売買 |
実体のない商品 | フラワーアレンジメントの教室を開催する、ブログや動画で情報発信を行う | 参加費、広告収入 |
サービス | 結婚式場やホテルなどで行われるイベントの演出を行う | 労働報酬 |
3. 起業に関する様々なノウハウを知っている場合
上記2つの例では実体のある商品を取り扱ったが、実体のある商品をまったく取り扱わない仕事、というのもある。コンサルタントやセミナー講師などといったものがその代表例だ。
たとえばあなたが、ある企業のスタートアップに参加した経験があり、起業に関するノウハウを持っていたとする。ならばそれを人に”教える”ことで、その報酬としてお金をもらうことができる。
起業ノウハウを題材とした事業は、以下のように展開できる。
方法 | 具体例 | 収入の得かた |
実体のある商品 | なし | – |
実体のない商品 | 起業ノウハウをまとめたPDFや動画ファイルを売る(情報商材)、ブログや動画で情報発信を行う | 売買、広告収入 |
サービス | 起業に関するコンサルティングやセミナーを行う、起業塾を開催する | 参加費、入会金、月謝 |
起業ノウハウに限らず、あらゆる分野で「ノウハウを教える」という事業形態が増えている。この手の事業は、店舗を構えたり、実体のある商品を用意したりする必要がないため、誰でも始めやすいのだ。
起業に必要な知識やスキルはどこで手に入れればいい?
ここまで読んでいただければわかる通り、事業を行うためには何かしらの知識やスキルを持っていることが必要不可欠になる。
料理が作れる、英語を喋れる、SEOに詳しい、マーケティングに詳しい、デザインが得意、カメラが得意、投資が得意など、分野は何でもいい。とにかく、希少性の高い知識やスキルを持っていればお金になる。
たとえば、料理なんてわりと誰でも作れる。しかし、本当に美味しい料理を作れる人となると、その数は限られる。これが希少性だ。ある程度の希少性があり、あとは市場が小さすぎなければ、収益をあげることができる。
現時点で事業に繋げられそうな知識やスキルがない人は、まず自分が行いたい事業を決め、それについて学ぶところから始めなければいけない。学び、経験し、十分な実力が身についたと思った時に、起業する。これが起業のもっともオーソドックスなパターンだ。
他にも、アフィリエイトやネットオークション(ネット転売)などインターネットビジネスで起業する、という手もある。
インターネットビジネスは、その名の通りネット上でビジネスのほとんどが完結するので、既存のビジネスに比べ金銭的なリスクが低く、専門的な知識やスキルがなくても始めやすい。
ただ、誰にでも始めやすい分ライバルが多く、安定した収益をあげるためには相当な努力が必要になるという一面もあるので、その点はきちんと意識してから臨みたい。「簡単に始められる=簡単に稼げる」ではないのだ。
個人事業主こそ複数の事業を並行して行うべき?
あなたが様々な分野において知識やスキルを持っているなら、複数の事業を一緒に行うこともできる。むしろ、リスク分散やチャンス拡大という意味では、ある程度は複数の事業を並行して行った方がいいかもしれない。
ただ、いくつか注意すべきことがある。
- 関連性の薄い事業を同時進行するのは効率が悪い
- 多くの事業に手を出しすぎるとどれも中途半端になりやすい
よく、事業がうまくいかないからといって様々な事業に手を出してしまう人がいるが、このようなやり方はあまりお勧めできない。なぜなら、1つの事業でも満足のいく結果を残せない人が、複数の事業を並行して行って、高いパフォーマンスを出せるわけがないからだ。
まずは1つ目の事業でしっかりと成果を上げ、軌道に乗ってきたら、1つ目の事業と関連性の高い事業を始める。これが理想的な形だろう。ここで2つの事業に関連性を求めるのは、相乗効果が期待できるからだ。
たとえばアフィリエイトで成果を上げ起業したなら、2つ目の事業はアフィリエイトのコンサルティングやセミナーなどを行えば一貫性があるだろう。
実際に起業するまでの手順(筆者の場合はこんな感じでした)
事業には様々な形があり、起業を志した段階での人々の知識やスキルのレベルも様々なのだから、起業するまでの手順は人によって様々だ。
そのためここでは、企業に至るまでに踏む最低限の手順を書いてみようと思う。
- 事業を行うのに必要な知識・スキルを身につける
- どんな事業を行うかを考える
- 起業のための準備をする
- 起業する
……。
非常に味気ない内容になってしまったが、だいたいはこんなものだ。
上でも書いたが、開業届出や会社設立などの各種手続きは起業前の段階では必要ない。これらはきちんと事業で収益が上がるようになってから考えればいい。会社設立はかなり手続きが面倒だが、お金を払って手続きの大半を司法書士に委託することもできるので、起業前から時間をかけて勉強したり、深く悩んだりする必要はないだろう。そんな時間があったら事業のことを考えた方がいい。
ちなみに私もアフィリエイト系の事業で起業を経験しているのだが、その時の流れは以下のようなものだった。
- 大学卒業後、金融系の企業に入社。入社数ヶ月にして会社をやめることを考え始める。
- 退社を見据え、副業としてライターの仕事を始める。文章を書くのは得意ではないが好きだった(文章=自分の持っている知識やスキル)
- しばらくライターをやってみて労働対効果が悪いと判断し、もっと効率のいい副業はないかと探し始める。ブログアフィリエイトを知り、勉強しながら実施する。
- 2年近く副業としてブログアフィリエイトを行い、月に20万弱稼げるようになった段階で退社。起業。(なお、当時の自分には「起業した」という感覚はなかった。)
- めんどくさいと思いながらも、確定申告のことを勉強し始める。
- 確定申告で必要になるため、開業届出、青色申告届け出を税務署に出す。
- 確定申告のことがよくわからないので、税理士に丸投げして済ませる。
- 法人化について考え始めるが、税理士に「法人化は年収1,000万円を超えてから考えればいいよ」と言われたのでとりあえず考えるのをやめる。
- 起業から2年後、法人化に至る。
ちょっと起業後のことも書いてみた。
見ての通り、私はわりとズボラな人間である。こんな人間でもそこそこうまく(?)事業を営むことができているのだから、起業というのはそんな特別な人間にしか行えないものでもないし、そこまで難易度の高いものでもないと個人的には思っている。
まとめ
今回は、起業とは何かという根本的なことから、起業をするにはどうすればいいかということを話してきた。少しはお役に立てただろうか。
起業をする上でスキルや知識が必要不可欠だと記事中で書いたが、起業はあくまでスタートにすぎない。「起業=事業を始める」ということだから、起業を志す段階で学び始めるべき要素は他にもある。たとえば集客・営業などのテクニックもそうだし、起業家・事業主としてのマインドもそうだ。
マインドは抽象的なものだから軽視されがちだが、実はとても大切だ。この重要さがわかっていない人は事業を始めてもうまくいかない場合が多い。あなたも起業を志す人なら、ビジネスマインドについてある程度知っておいた方がいいだろう。

税金や法律もそうだし、人を雇うのであればマネジメントについても学ぶ必要がある。ただ、これらはある程度事業が軌道に乗ってきてからでも別に遅くはない。